<レビュー>国土学再考 「公」と新・日本人論

国土学再考 「公」と新・日本人論
大石 久和 (著)

仕事に追われていて、事務所を不在にしているとき、
いつも好意にしてくださる取引先の方が来訪して、
そっと僕のデスクに置いていったくださった本。

ようやく時間ができたので、読んでみました。

建設省出身の著者は、
災害列島日本で、世界に通用する国力を持つために、
道路や港湾などの社会的インフラは、いまだに不十分で、
やみくもに言うだけの「無駄な公共事業を減らせ」に、
真っ向から対立する立場。

よくヨーロッパやアメリカと比較して、
GDPあたりの公共土木事業の比率が高いだの、
道路整備率は海外より劣っているだの、
他国との比較をしつつ、

一方で、大量殺戮の歴史を歩んできた城壁文化のヨーロッパと違い、
穏やかで事なかれ主義的な日本の文化は、地震や水害などの天災が多い風土がもたらしたもの、
と指摘。
つまり、「人が人を殺してきたヨーロッパ」と「天災が人を殺してきた日本」では、
死に対する恨みの行き先が異なり、
天のみが人を殺すことができる、という日本の風土が、日本人の宗教的思想を生んだ、
とも指摘。

個人が自身の社会的役割を認識して、真の市民社会を勝ち取ったヨーロッパに対して、
日本は、「村落」型の顔の見える小さな社会では、組織力を発揮するが、
都市型の社会では、自己を主張しなさすぎる傾向にあり、
世界に対峙できない、という論調です。

前半の、「もっと道路を作れ、港を大きくしろ」的な論調には、
ちょっと不快感を感じましたが、

後半の、日本人の社会の作り方の話は、とても参考になりました。

古来からムラ社会で生きる術は、日本人に遺伝子のように染み付いていて、
同時に、欧米型の真の市民主義社会のイイトコ取りをしてきた日本で、
いったいどのようにして、社会資本を整備して、それを使いこなしていったら良いか、
日本人の習性を知っておくには、分かりやすい本だと思いました。

…ただ。
同じ文章の繰り返しも多々あって、
ちょっとくどいし、
感情むき出しの客観性の低さが、
ちょっと気になります。


2010.02.19 | コメント(0) | トラックバック(0) | レビュー

<レビュー>道路整備事業の大罪

国道を撮り続ける者にとって、
このような標題の書物は
押さえておかなければならない。

そもそも、僕にとって、国道を撮ることは目的ではなく、
日本を広く知ることを目的であって、
その1つの手段として、
全国を網羅的に整備されている国道を選んだ。

それならば、鉄道や路線バスでも達成できそうだが、
自由に移動できる自動車、というものを、
免許取得とともに得ることができたからだ。

そうやって、国道と自動車とともに、全国を見てきて、
道路とはいったい、何なのか…
人は道路を作りたがるが、
それは果たして正しいのか…

道路は必要なのか、不要なのか。

どうも腑に落ちない、
なんとなく言いたいことがあるが、
なんて言ったら良いか適切な言葉が見つからず、
悶々としていた…

それをピタリと言い当ててくれたのが、本書だと思った。

本書は、道路がもたらす負の側面を事例を元に論破し、
モータリゼーションによって、ヒューマンスケールを越えた住みにくい都市ができ、
自動車を中心とした文明社会の限界を指摘している。

道路と自動車が好きな僕にとっては、身につまされる論調で、
「そんなに道路は悪いのか…自動車は悪いのか…」
と反論したくなるところだが、
具体的にどう反論したら良いか、ロジックを組み立てられない。

と同時に、筆者の意見も、多いに賛同する部分もある。

道路を通るだけでなく、写真を撮り始めたのは、
道路の良い点だけでなく、悪い点も知りたかったからである。

自動車の中の「プライベート空間」から出ることをせず、
単に目的地までの移動だけでは、
通過交通の1人になるだけであって、
そこからは何も見いだせないと思ったからである。
だから、2kmに1度は車から降りて、
カメラを撮ることを決意したのである。
50kmの道のりを30回近く車を乗り降りするのだから、手間ではある。

ただ、そこまでトライしても、分からないことがある。
それが、本書にあるような、過去からの経緯や、人々の暮らしぶりである。
僕が撮影するのは、長い地域の歴史の中の1点を切り取ったもの。
そして、そこで誰とも出会わなければ、そこの暮らしが豊かなものかどうか、
景色からだけでは判断できない。

そして、僕が撮影対象としている道路が、
その地域にとってどんな役割を担っているのか、
あるいは弊害をもたらしているのか、
正確に知ることができないのである。

このことだけは、国道撮影を6年続けて、分かってきた。
その地域の道路について、正確に知ることができないが、
6年続ければ、それなりに知識もつき、
想像はすることができる。

本書は、少々、感情論的に想像で述べている節もあるが、大筋で共感でき、
僕のモヤモヤが明文化されて、すっきりした気分になる。

ただやっぱり、大罪とまで言い切れないのが、国道稼業。

ついでに、道路だけでなく、
土木全般についても、大罪だと言われるんじゃないかと、
「道路は悪」の風潮を心配します。


2009.10.07 | コメント(6) | トラックバック(0) | レビュー

<レビュー>日本の港と歴史

国道とは関係ないのですが、交通という点で共通している港。
港と道路は、物流や交易という点では共通していますが、
違う点が1つ。

それは、港は、拠点である、という点。

道路で言えば「交差点」
鉄道で言えば「駅」

港は都市活動で重要な施設のうちの1つです。

車や鉄道が発明される遥か昔から、
人類の交通手段は船でした。
エジプト神話の「ノアの箱船」で登場するように、船の歴史は古く、
船がもたらした功績は、世界中の都市にも現れています。

果たして、自動車の功績は…
と考えるのに、この本を買って読んでみることにしました。

江戸時代の海運、関東大震災と港復興、戦争と連合軍の接収、など
国益に密接に影響を及ぼした港の姿を知ることができます。

高速道路の歴史は、たかだか半世紀。
奥深い港の歴史を学ぶことで、道路のあり方を学べるんじゃないかと、
貧しい読解力で、この本を読んでいます。

…以下、余談。

この本の戦後復興のページを電車の中で読んでいたら、
隣に座っていた50代くらいの女性から、声をかけられました。

「私、戦争の残留孤児の支援をしている者です。
あなたのようなお若い方が、
戦争に関する本を読んでいるなんて、
感激いたしました」

と。

残留孤児の支援のために、「港の歴史」を勉強しているわけではないのですが、
歴史を学ぼうとすると、どうしても、戦争の話は避けて通れないのですね。

交通は、軍事利用も出来る、ということを、
その方に話しかけられたことで、改めて気付かされました。



2009.09.07 | コメント(0) | トラックバック(0) | レビュー

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国道、港湾、河川、都市を回る家出人

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